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UK in 1988 (その2)

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このライブエイドより少し前、デビットボウイが「レッツダンス」というアルバムを発表しました。

この楽曲自体には特に好きも嫌いも感じなかったのですが、自分が影響を受けていた渋谷陽一が自らが主宰している雑誌にこのアルバムの発表を受けて書いた記事「青春の終わりとロックの始まり」この記事というか論考には大きなショックを受けたのを今でも覚えています。
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今、その雑誌自体は手許にないので印象だけで内容を思い出しているのですが「ロックミュージックというものはある種、青春時代の象徴のように扱われてきた音楽だ。青春時代とは自分自身をうまくコントロールできなくて、そしてこうあるべしという世界観を大人たちから押し付けられてそれに抗っている時代、そういったと世界との違和感、あるいはその大人社会との折り合いのつかない自分の存在証明を表現していたのがこれまでのロックミュージック。

しかし時代は変わった。ロックミュージックもポピュラーミュージックの一分野。まず売れるのが第一、これからのロックミュージックはある世代の代弁者みたいな存在や少数派であることの逆説的な優越感から脱しポップミュージックの王道としてより幅広く受けいられることの方向を目指すべきだ。」

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はっきり言ってこの言説は失望と戸惑い以外の何物でもありませんでした。

レッツダンスの発表が1983年4月、僕が高校2年になったばかりのころです。まさに青春時代のとば口にたち、世界の広さを感じ始めた一方で芽生え始めてきた自我を持て余し感情の浮き沈みが激しく、そんな自分自身の葛藤に寄り添ったのがロックミュージック。

ブルーススプリングスティーンの出世作、「明日なき暴走」、原題は"Born To Run"ですからほとんど反対のような邦題の気がしましたが、図らずも原題と邦題でそのギャップが露呈しているこの曲が典型だと思うのですが、絶望と希望の二面性、死とそこからの再生を疾走感のある音楽の乗せて表現されている、それが僕にとってのロックミュージック、でした。

書いていて少し当時の気持ちを思い出してきましたが、ギリギリの切迫感とでも言うのでしょうか、今から見れば幼稚ですけど当時の自分的にはどこに出口があるのかまったくわからない。彷徨の中でどこか明かりが見えないか、その明かりの見えるところに連れて行ってくれるかもしれない、そう思って聞いていたのです。
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そんな気持ちで浴びるように様々なアーチストの曲を聴いていた時に「ロックミュージックっていったって、所詮は大衆向け音楽の一分野、いかに自分が独自の世界を持っているって歌ったって、売れなきゃ目立たない。その意味でやはり売れてなんぼの世界だよ。」と書かれたのですからたまりません。NHK FMでの彼が紹介するロックミュージシャンは気に入ったものが多かったし、その軽妙な語り口自体には魅了されていましたけど、その頃のロックミュージックは特別なものと思っていましたし、ある意味、人生そのものとまで感じていました。

特にこの記事がきっかけで興味を覚えたデビッドボウイの世界、その音楽と詩は当時の自分にとって(彼のある歌の中にもそのような表現がありましたが)神そのものでした

by michikusajinsei | 2019-03-24 09:13 | UK | Comments(0)