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昭和61年 野上電鉄 山陰本線


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男性では珍しいかもしれないが、僕は朝ドラの熱心な視聴者である。

きっかけはシンガポール赴任である。シンガポールは日本との時差が1時間、NHKの海外放送は定時ニュースや朝ドラ、大河ドラマなどは日本と同時間帯に放送しており、シンガポールでは午前7時15分、ちょうど朝ドラが終わった頃合で出勤時間になることからニュースを切ることなく、ながら見をすることから生活が始まったのである。

そしてまた、自分の赴任と同時に始まったのが近年の朝ドラ復活の端緒となった「ゲゲゲの女房」だったのも幸いだった。水木みのる夫妻の生涯を描いたこのドラマは作り物を超えるリアリティーがあり、また時代的にも自分の少年期が多く描かれていたこともあって興味が尽きなかったからである。以降、あまりにも話が荒唐無稽過ぎた「純と愛」を除いて毎回見てきた。

そんな朝ドラ自分史の中で一番は何と言っても「カーネーション」尾野真千子の繊細で思いつめたような演技ときめ細かい脚本が印象深い。それから「マッサン」と「あまちゃん」が続く。「あまちゃん」は役者の演技よりもある意味、震災という事実の重みと同時に50歳前後の自分たちの青春時代を振り返らせてもらうような趣があったし、「マッサン」はヒロイン、シャーロット・ケイト・フォックスの感情豊かな演技が素晴らしかったからである。特に戦時中に官憲が彼女を拘束しようと踏み込んできたときのアリアは圧巻で、その日の午前中は仕事にまるで身が入らず深い余韻に浸っていたのを思い出す。

ただ最近の朝ドラは役者や素材は良いのに脚本が雑というか人物造形や時代背景の作り込みが浅くて少々食い足らない思いがすることが多かった。
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そんな停滞を感じさせる中で4月から始まった「ひよっこ」

これが予想外に素晴らしい出足である。

まず音楽がいい。タイトルの歌は桑田佳祐。正直、サザンの歌はあまり好きではないが、この曲は昭和中期の歌謡曲に賛歌を捧げるようなメロディーと歌詞が素敵だし、劇中に挟まれる宮川彬良の音楽もシーンにマッチした抒情的な曲に佳曲が多くて聞いていて心に残る。

肝心のお話はまだ始まって1ヶ月であるので総括的な判断は難しいかもしれないが、上に書いた不満、人物造形と時代背景の描き方がとても自然で、また役者の演技がそれをうまく具現している。古谷一行の祖父のもつ丸みや木村佳乃の慎ましい母親ぶりは、ここのところ変な家族関係ばかり登場させていた朝ドラの流れを正しい(?)昭和のある家族の姿を描き何度もせつない気持ちを抱かせる。

ただそんな静かな生活を描く中で、特に素晴らしかったのは木村佳乃が失踪した夫を探しに上京し警察に相談し行ったときのアリア、

いばら「き」です。
「いばらぎ」じゃなくていばら「き」です!
谷田部実といいます。

わたしは、わたしは、出稼労働者を一人探してくれと頼んでいるのではありません。
ちゃんと名前があります。

茨城の奥茨城村で生まれ育った谷田部実という人間を探してくださいとお願いしています。

ちゃんと・・・ちゃんと名前があります!お願いします!
あの人は絶対に自分でいなぐなったりするような人ではありません!

お願いします!お願いします!
探してください!お願いします!

日本ではシンガポールと違い出勤前に見るわけにはいかないので帰宅後に見ているのだが、このシーンの木村佳乃の必死さの演技には大げさかもしれないが鳥肌が立ち息を呑んでしまった。物静かで感情を見せることは少ないがいざという時に見せる芯の強さ、感動という言葉では言い尽くせない感情が自分の中を走った瞬間である。

今回の写真は白熱灯が鈍く輝く昭和の夜汽車(実際は電車だが)と行商姿の女性の後ろ姿。30年前にこれを写したころ、こういった高度経済成長以前の情景にまだ各地で出会えた。ある意味、好奇心から自分の中では新鮮な情景ではあるが一方でこれらに旧世代の泥臭さを感じたのも(未熟としか言いようがないが)正直なところゼロではなかった。

しかし今となっては、どちらも見ること、感じることの叶わない懐かしい光景である。そしてまたバブルという時代にもこのような風景があったのも昭和日本晩年の時代相である。

by michikusajinsei | 2017-05-04 15:19 | 野上電鉄 | Comments(6)

Commented by pikorin77jp at 2017-05-04 16:24
こんな電車の中 趣あっていいですよね。
なんとなく車内の匂いまで感じます。油の匂いがしてたような。
女性が一人  何を考えているのでしょう。
Commented by ちまき at 2017-05-04 22:52
わたしも好きです!! 朝ドラ。
そして「ひよっこ」ハマっています。
涙腺緩いんですかね・・・ 毎日涙が出ます(笑)
おっしゃってる 木村佳乃さんのあのシーン。わたしも息をするのを忘れるくらい衝撃的なシーンでした。
有村架純がまた良い感じに田舎娘感が出ていて好感持てますし、
時々クスッと笑える部分もあり 今後もとても楽しみです。
毎日観てるもんで、時々あの方言がうつってしまいます(笑)

屏風ヶ浦のお店、気に入ってくださって良かったです。
Commented by michikusajinsei at 2017-05-05 08:27
ピコリンさま、コメントありがとうございます。

そうですね。油びきで木部を保護することは普通でしたからこの電車もそうだったかもしれません。この写真から10年後にこの鉄道は野垂れ死のような悲惨な最期を迎え車輌もかなり荒廃していたらしいですが、この頃はとても丁寧に整備され乗っていて感心したものでした。

そうこの女性、一体何を考えているのでしょう。手前味噌ですが、この写真を見ていろいろなことを想像したくなります。
Commented by michikusajinsei at 2017-05-05 08:42
ちまきさま、コメントありがとうございます。

「ひよっこ」いいお話ですよね。僕も結構、涙腺を刺激されてます(笑)翌日、警察官が木村佳乃に声尾をかけるシーンも印象的でした。おなじ「いばらき」出身じゃないですか、協力しましょうってね。もちろん出来過ぎの偶然だけど、それが嘘くさくならない自然さがある。この場面だけではないけど、そういうカットが多いことがこの物語世界に自然にはまり込んでいくことができる、そう思います。

有村架純も良いですね。彼女の役を絡めてもう一回、「ひよっこ」のことを書くつもりにしています。

ちまきさんのブログで教えてもらった屏風ヶ浦の店「あいぐん」良かったです。近いうちにぜひまた飲みに行きたいと思ってます。
Commented by Cedar at 2017-05-05 19:28
しばらくです、野上の車内写真痺れます。
朝ドラの話は~スイマセン「あまちゃん」すら見てないので・・・
Commented by michikusajinsei at 2017-05-06 07:43
Cedarさま、コメントありがとうございます。

いやあ、過分なお褒めの言葉、恐縮です。それにしても昔の汽車電車、特に木製車内を持つ車輌は味がありましたね。また白熱灯の電球というのは鉄道に限りませんが写真で撮るとどうしてかえもいない情感を醸し出します。そんな特徴と偶然に助けられてこの写真が撮れたように思います。

朝ドラは好みが分かれると思いますが、時代背景が昭和と平成なので出来の良い時(そんなに多くないですが)も悪い時も誰かに語りたくなってしまいます。まあ独り言と思って読み流してください。