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昭和63年 BARCERONA(その2)

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鉄道雑誌を読むようになったと言っても小学生にとっては高価な書籍である。小遣いではおいそれと購入できる額ではない。だから最初のうちは2ヶ月に1冊である。その月の21日になるとそれこそ待ち焦がれて購入し、興味があるなし、判る判らない関係なしにボロボロになるまで読み込んだ。

そのうちに親も鉄道雑誌が子供用の本ではなく大人向けの雑誌であることが判り、漫画や児童向け雑誌よりは勉強に役立つようになると思ったのか、小遣いとは別枠で毎月1冊は資金を出してくれて小遣いと合わせて隔月で2冊、読めるようになった。

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そうなってくると読解力は不足しても記憶力は確かな子供の頭である。号を読み重ねてくるといつしか常連投稿者の方というものが判り、その方々の記事を楽しむようになった。具体的にその名を挙げると佐々木桔梗と野村薫のお二方である。

文体は違うが、いずれも旅や走る車輌の描写。車窓であり、駅頭でもあり、線路際、そしてまた時には路面電車が走る街角、時代も1930年代から70年代まで。添えられている写真と共に読むと行ったこともないのにその風景や車輌が目に浮かんでくる。

その頃の鉄道ファンであると野村さんであれば食堂車特集号の古今東西食堂車の味食べ比べ、佐々木さんであれば上野駅特集号でのC51。鉄道ジャーナルだと野村さんは以前も書いたが南海、阪和、近鉄の歴史物語「君よ知るや南のレーサーたち」、佐々木さんは「鉄道趣味の内側と外側 ポスターと書物のドラマ」という二つの連載記事。そういった記事がとりわけ印象深い。

特に佐々木桔梗さんは書籍の装丁も手がけられることからかページそのものの構成が美しくて、というか正直に言えば扱っているテーマが高尚過ぎて中身を読んで理解していたとはとても言えないが、眺めているだけで時間を忘れてその世界に引き込まれている自分がいた。

そう例えて言えば本を読んでいるというより音楽を聴いていて感じる陶酔感に近いものを感じていた。

by michikusajinsei | 2017-09-02 15:16 | スペイン | Comments(0)