昭和60年 山陰本線(その2)

白鳥や 哀しからずや 空の青 海の青にも 染まずただよう
若山牧水の名歌である。
特に短歌に親しんだということはないのだが、小学校の担任と高校の国語教師が短歌が好きで色々な短歌を紹介してくれた。その中でも自分が旅をするようになり印象的なジャパンブルーの空や海の青に接すると浮かんでくるのはこの歌である。
山陰を旅したのは数回あるが、いずれも晩夏から秋にかけての時期、盛夏の時期を過ぎ誰もいない海岸を歩いていると牧水が歌った白鳥ではないが、空にも海にも染まずに漂うように、どこにも同化できないやるせなさを感じて旅をしていたことを思い出す。
ただ、同時に山陰の海はいつも穏やかで、湘南の海にあるギラついたところが少しもなく、そこでは肩肘を張らないでいいホッとした気持ちも感じていた。
そう、たまに通る地元の方の車以外、人の気配を感じることもなく、かといって北海道の原野のような野生を感じるのではなく、列車が来るのを待つ間、色々な雑念が脳裏に浮かんでは消え淡々と時の流れに身を任せていた、それは極私的ではあるけれど、時代の影響も無視しえない青春時代特有の時間と風景だったのだろう。
青春時代という存在が加速度をつけて自分の手の届かないところに去っていく、そんなことを感じることが多い現在から振り返ると、そのように思えるのである。
by michikusajinsei | 2016-09-07 06:53 | 山陰本線 | Comments(0)

