昭和63年 能勢電鉄
昭和晩年の地方私鉄には昭和戦前はおろか大正時代の車輌も残っていたし、更新改造を受けて原型の面影は殆どなくなっていたが明治生まれの車輌すら残っていた。
だから行き当たりばったりでそういう私鉄を訪問してもバラエティに富んでいて当初の予定を忘れるくらい楽しんだこともある。少し前に掲載した京福電鉄などがそうだ。
一方、ある意味、国鉄並みに整備された近鉄や阪急といった大私鉄は、退潮甚だしかった国鉄にない華やかさがあり、それもまた何度も訪問し楽しんだものである。
しかしそのいずれにも当てはまらない私鉄も当然ある。この能勢電鉄が典型的な存在。確かに本線から消えた旧阪急の車輌はいたが、それは30年経った今だから貴重に思えるのであって、その当時はそれをことさら意識したわけではない。払い下げを受けた車輌も写真のそれなどは沿線の乗客には冷房がある近代型で評判は良かったと思うが、趣味的にはぜんぜん興味がわく存在ではなかった。ただせっかく関西にいるのだから乗りつぶしを兼ねて行ってみるか、そんな気持ちでの訪問だし、美しい塗装の610系には感銘を受けたが、それ以上踏み込んで他の車輌を眺めていたわけでもない。
それでも昼間の時間だけは余裕がある学生時代、ごく日常の風景とはいえ、駅撮りだけではなく、走行写真も撮っていた。
そしてまた、こんな写真も撮っていた。
そして、これらの写真を見ていると退屈に思えた能勢電も車種を問はず丁寧に整備され輝いているし、またこのような古典的な車輌も多少痛みが出てはいるが残っていた。
一言で言えば余裕があったということか。そして今の時代に一番欠けているのはこのような余裕とそれが生み出す丁寧さでないか。
とりたてスターがいないが一輌一輌が輝いている昭和晩年の能勢電を見て、ふとそんな感想が頭に浮かんだ。
by michikusajinsei | 2016-04-08 21:41 | 阪急電鉄 | Comments(0)