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昭和62年 山陽本線

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少し前になるが、鉄犬さんのお導きで知遇を得、兄事させていただいているシグ鉄さんとCedarさんのお二人の間で鉄道写真の様式で論戦(?)が展開されていた。曰く「後ろか前か」である。

もちろん昨今、時折目にする言いがかりのような「炎上」騒ぎとは無縁の論陣だったがそれぞれの視点の違いが見えてとても興味深かった。そして自分自身はというと特に写真の様式に好悪があるわけではなく、せいぜいCeadrさんがおっしゃるところの正統派列車写真を「絵葉書写真だな」と思って軽く揶揄していた程度である。だからと言ってそれが嫌いだったわけではない。今回の写真を撮影した場所である山陽本線の戸田ー富海は大好きな撮影地で、その場所の特徴はというときれいな列車写真を撮るには絶好の撮影地だったからである。

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この撮影地を知ったのは「C59」という写真集にあった中島忠夫さんという方の撮影した列車写真であるが朝もやをついて快走する急行列車のスピード感が生き生きとしていて何度見ても飽きず、初めてその地に立ってブルトレ特急を見たときには全く同じ世界が展開していて感激に震えたものだった。

今回の写真に先立つ数年前、高校2年生のときである。

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その頃の写真はまだスキャンしていないのだが、殆どの写真は普通の列車写真だったはずである。ただ同時期に、もう一つ影響を受けていたのは鉄道写真の神様、廣田尚敬さんの写真であり彼が発明した流し撮りという手法である。これは一生懸命練習した。とにかく自分は写真の中に動きが欲しかった。

そしてまた、シグ鉄、Cedar両師が撮り方の違いを越えて求めているものも車輌の動きではないかと思うのである。

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僕たちの世代は鉄道写真愛好家としてはポスト蒸機の第一世代である。蒸気機関車は煙やロッドの動きである程度、写真の中で動きというものを表現できた。しかし電車、気動車は基本的にはそのような要素はない。ただ撮しただけでは動いている車輌の魅力というものが伝わってこないのである。その中で目の前の車輌の躍動をどう撮すか、それが特に語らったわけではないが暗黙の了解で僕たちが意識していたことだった。

流し撮り以外でも例えばそれを打破する試みで動きの表現という点ではバルブ撮影による光跡の表現という写真も一時期流行したが車輌が写っていないので僕にはあまり興味が惹かれなかった。

写真の中にどう列車の動きを伝えるか、そういった世代的な環境の中で自分たちはどんな視点で鉄道写真を撮るべきか。その模索で自分たちの写真技法をどう昇華すべきか。あの時代の鉄道写真好きな学生は腕は未熟だったけれどそう考えてあれこれ試していたのではないか。格好つければそんな時代と世代だった、そんな風に思えてくる。

立って、或いは座って、カメラを横にし縦にし、シャッタースピードを変え色々な写真を試した。正面勝ちも追い掛けも、線路に近づき或いは離れ様々な視点と格闘した。

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そんな試みの中で自分が大きな影響を受けたのは、戦前派鉄道写真界の巨人、苗村武さんと西尾克三郎さんである。また鉄道写真ではないがヨーロッパの建築写真で一世を風靡した田原桂一さんである。

「ローアングルの苗村」

自分は密かにそう名付けていたが、苗村武さんの心持ち見上げるような画角の写真は平凡な列車写真を一瞬にして躍動感を感じさせる被写体に引き上げていた。

「光の魔術師、西尾と田原」

田原さんは建築、西尾さんは列車写真ももちろんたくさん残されているが真骨頂は機関車の肖像写真である。これらはただ撮すだけでは鈍重な塊でしかない。それらの中に光をどう導き何を浮かび上がらせるか。彼らの手にかかると一瞬にして機関車や建築の浮かび上がらせるべき部分、部分が文字通り光り輝き、生命力のあるオブジェクトに変化する、そんな印象を抱いていた。

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もっとも影響を受けたと言ってもそれが消化できたわけではない。ただ朧げながらわかってきたことはその二つ、光の捉え方であり、被写体の位置をどこに置くかである。

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EF66を撮したこの5枚、多分、そんなことを考えながら撮っていたのだと思う。刻々と変わる光の中でどう撮るか。成功しているかどうかは別にして正面勝ちでは普通のスタンディングポジション、心持ちローアングル、そして後ろ向き写真。どれも平凡な構図で特筆するような写真ではない。しかし他人にはともかく自分にとってはその頃の悪戦苦闘が思いだされ甘くもあり心持ち苦い気持ちがよみがえってくる写真でもあるのだ。

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特にパンタグラフが切れてその意味で失敗作ではあるが、この一枚、後ろからローアングルで追いかけた写真、動きを表現するという点においては自分の中でも気に入っている写真の一枚である。

by michikusajinsei | 2017-04-29 15:41 | 山陽本線 | Comments(2)