昭和60年 & 63年 東武鉄道(その3)

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前回は意外な驚きを書いてみたが、そうは言ってもやはり東武鉄道に優等生的な匂いがある。その匂いの拠ってたつところは結局のところ東武鉄道という会社の経営姿勢であり、その具現化された姿が一連の東武鉄道車輌群。

その東武鉄道車輌群の特徴を一言で言えば「車格を超えた快適性」ではないだろうか。
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そんな表現をすると、一昔前の車の広告みたいで嫌味ったらしい雰囲気になってしまうが、要は優等列車向け、普通列車向けといった想定された新しい電車を企画するときの心持ちとして、その車輌の性格付けをトップダウンで行うかボトムアップで行うか、ということである。

その点において、旧国鉄は典型的なトップダウン。優等列車の基準を決めてしまうとその枠に捉われてなかなか接客面でのアップグレードがなされない弊はその最後まで続いていた。上級のグリーン車がリクライニングシートだから普通車にリクライニングシートを採用するのは如何なものか、という発想である。

そしてそういった観点での経営方針は私鉄各社にもそれぞれあってそれはそれで興味深いものがある。
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京急や阪急のような都市間鉄道は設備の差別化よりはスピードで優等列車と普通列車の差を設けているのが多い。それに対して東武鉄道はそういった意味では国鉄に近いクラス分けをしていると思うが、国鉄のトップダウンに対し東武はボトムアップ思想で車輌の企画をしていたのではないだろうか。

如実にそれが現れているのが通勤車輌の8000系だと思う。昭和30年代後半、そのころ優等車輌からようやく装備されだしたエアサスペンションの台車を装備して登場している。

最優等車輌のDRCもそうだ。全席リクライニング、車内ビュッフェにジュークボックス、南海のデラックスズームカー「こうや」と並んで当時の国鉄2等をはるかに凌ぐ贅沢な内装である。

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そして、この1800系、りょうもう号用車輌。この車輌もまた急行という等級にある意味ふさわしくない外観・内装だ。この車輌を当時の国鉄車輌に照合すれば立派な特急用の車輌である。正直申せば、なお前面は安っぽい造りであるし優等車輌にある華やかさというものは感じられない貧相さ。その点で急行レベルのお金のかけ方だが、移動する乗客にとって大事なのは客室である。当時の国鉄特急とほぼ同じ造作で、空調完備でリクライニングはしないが、ゆったりとした回転式クロスシート。その点では昭和44年の登場という時代を考えると合格点だと思う。

国鉄という基準があったから、車格に対する設備を考えるときにそれを横目に見て少しそれに先んじることができた面はあったかもしれない。とはいえ、人口急増期でかつ旅行需要が拡大した時代、放っておいてもそれなりに人は乗ってくれる中、逆に言えば国鉄程度の設備で特に不満が出ることもなかっただろう。しかしそんな環境でも東武鉄道は鉄道事業の価値とはないかを探求し静かにかつ着実に体質を改善させていった。

地味で華がないとずっとそんな感想を抱いてきた東武鉄道の車輌たちも見方を変えれば思いの外、深い思想が隠されていた、そんな思いがするものである。

by michikusajinsei | 2018-01-23 06:50 | 東武鉄道 | Comments(0)