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昭和62年 小田急電鉄(その3)

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「満を侍して」

この小田急7000系の登場の時くらい、この言葉がしっくりきたこともなかった。

異次元の飛躍と書いた3000系SE車はまさに時代の旗手という雰囲気はあったが、技術的にも商業的にも賭けのような冒険的な要素が多分にあるだけに車輌であるがゆえに安定感というものはあまり感じられない。すぐに交代選手である3100系NSEが登場し主役の座を奪ったように、革新的な車輌ではあるがどこか過渡期的な匂いを感じさせる。

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その3100系、前面展望席を備え小田急ロマンスカーの代名詞ともいえる車輌である。そして、この前のブログにも書いた通りで幼き日の思い出の中でとても印象に残っている車輌であるが、純粋に形態だけ見ると手放しで格好良いというのは躊躇してしまう。

前面展望席というのは構想としてはその前からあったそうだし、実際にその前年に名鉄でパノラマカーという車輌がデビューしている。海外に向ければイタリアにもセッテベロという特急車輌があったが実績はその程度。設計にあたっては乗客の安全の確保や車輌限界で未知への挑戦があったと思う。

とりわけ安全の確保は大きな課題でその解決策として名鉄パノラマカーでもそうだが前面に油圧作動の大きな衝撃吸収ダンパーを設置している。そしてそのダンパーは車輌最前面に設置する必要があることから、それをデザイン的にうまく収めるためにそこがライトの設置場所になったそうだ。それが外観を決定づける重要なポイントでここで好き嫌いが分かれると思う。つまり構造から出たデザインで、従来の鉄道車輌のイメージに収まらない斬新な外観と言われるのだが、僕はどうもこのライトボックスが出目金を想像してしまってスマートさが欠けているように思えてイマイチなのである。

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さて、そういう前2代の後継者として登場した7000系。

斬新さ、という点では正直なところ先代、先々代に譲る。彼らにあった衝撃はない。しかし小田急ロマンスカーという言葉に込められたイメージ、期待、それは編成全体を貫くスピード感、前面展望席、なによりもオレンジバーミリオンとグレーの配色を完全に消化、自家薬籠中のものとし、どこから見ても威風堂々まったく破綻を見せない。

この車輌は後年、塗装が後継車輌の10000系に合わせて一回変更されている。そういった塗装の更新は大抵の場合、リフレッシュという意図に反して厚化粧感、格下げ感を感じさせるのが通り相場だが、この7000系に限って言えばそんなことは微塵も感じさせず優美さと骨太な安定感が調和した外観は登場から35年が経過した現在でも色あせない。

デザインだけではなく高速性能も先代達に引けを取らない。僕が高校の頃、この車輌は国鉄に借り出されて高速走行の性能試験を行っている。その時は結構話題になり僕も撮影に行きたかったが確か平日のみだったので学校を休む訳には行かず残念に思ったことを覚えている。

その走行試験はSE車の時のように世界最高記録を樹立というような華々しさはなかったけれど、連接車というどちらかというと特殊な構造を長年にわたって磨き上げてきた小田急技術陣の成果が認められての登用であり、トラブルを起こすことなく無事に予定されていた時速130km走行を終えている。

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しかしこの名車も来年の春には引退が予定されている。そして折しも平成からの改元が予定されているのはその翌年。時代の流れに棹を差して走りながらも、昭和の空気感を最後まで維持して平成という時代を全うした車輌、そんな言葉がこの車輌にはもっともふさわしいように思うのだ。

by michikusajinsei | 2017-07-06 12:01 | 小田急電鉄 | Comments(2)

Commented by シグ鉄 at 2017-07-07 17:13 x
子供の頃、SSEは好きでもNSEは嫌いだった。バリバリの東京人から見てもパノラマカーのパクリとしか思えなかったから。
名古屋人となりMHまでパクリであったことを知り、ますます嫌いになった。
ドケヨー、ドケヨー♪ の名鉄3連符に対し、姑息にも一音増やした4連符もパクリダー、パクリダー♪に聞こえてしまう笑止。
その後、165系改造のパクリもあったりで、もう何が何だか・・・鉄には著作権、肖像権はないと痛感した次第。
Commented by michikusajinsei at 2017-07-08 12:31
シグ鉄様、コメントありがとうございます。

ちょうど今、鉄犬さんのブログで湘南顏の人気投票が行われてますが、この世界は一度流行ると追随するのが習い性なのでしょうか。逆に言えば、だからオリジナルの造形を生み出した車輌のデザインは偉大であると思います。SE車がそうですし、パノラマカーがまさにそうです。前面もそうですが側面の連続窓がまた素晴らしいですね。