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昭和63年 梅小路(その2)

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その国鉄蒸気の中で最も好きなのが、この機関車。18900、C51である。

少し前になるが、『とれいん』のインタビュー記事で摂津鉄道で有名な坂本衛さんが明治とも昭和とも違う大正時代の車輌への愛着を語っていた。曰く明治も昭和もそれぞれ時代の先端を走る洗練された雰囲気があるが、同時にある種、近寄りがたい印象がある。それに比べて大正時代の車輌はどことなく柔らなか印象があって親しみやすい、というような趣旨で語っておられた。

この時はC51ではなく4110の模型を前にして語っていたと思うのだが、それはともかく、この言葉くらい大正の車輌、就中C51の良さを簡にして要を得て語っている文章はないと思う。同時に鉄道という枠を超えてその時代特有のデザイン感を的確に表現しておられており読んでいて思わず唸ってしまった。

確かにバロック的な荘厳さの明治、シャープなモダニズムの昭和はそれぞれ鉄道風景にも強く感じられる。
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明治期は国産車輌はほとんどないがその代わりとして東京駅に代表される駅舎がそうだ。明治期の駅舎、特に鉄道の存在感が増していった中期以降に建設された駅舎は町の玄関として華麗な装飾を施したものが多い。

一方、昭和モダニズムを象徴する車輌といえば、C53、そしてP-6。どちらも無駄のない直線で構成された機能美をよく体現しているように思う。

対して大正時代はどうか。
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重厚無比と評されることもあるD50でさえ、サンドドームや化粧煙突、全面デッキの丸みに上の二つの時代にはないある種の野暮ったさと同時に柔らかさを感じてしまう。

そして僕はそのデザイン的に甘いところ、明治の様式の影響を受けながら一方でのちのモダニズムにつながる機械を全面に出した荒々しい造形に例えようもない独自性と魅力を感じるのだ。

by michikusajinsei | 2016-04-19 23:44 | 国鉄蒸気 | Comments(0)