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昭和63年 能勢電鉄

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阪急電鉄は好きだったが、阪急電車、特にその旧型が好きだったかと言われると実はそうでもない。正直言えば僕の好みは京都線、すなわち新京阪電鉄の系譜に偏っていたのである。

特に自分が電車に興味を持つ前に引退してしまったP-6、デイ100には憧れた。中学生の頃、アダチからそのP-6や参急2200系などが発売され、あの黄色い箱を何度も篠原模型店の店頭でため息と憧れで見つめていたものだった。ただ、これらの車輌への憧れは自分が見ることが叶わなかったが故に、ある意味、実車そのものの魅力以上にその伝説に依かかった部分があったのかもしれない。

対して、元々の阪急型である900系などは見たことはないけど、自分が鉄道雑誌を読み始めた頃は未だ健在であったが、前回の小文ではないが当時は完全な脇役、スターに憧れるごく普通の少年には、その魅力は判らなかった。そこが実物ではなく写真やテキストから入った阪急好きと沿線に住んで走っている姿を見て育った生粋の阪急ファンの大きな違いなのかもしれない。

「道草人生、P-6は格好ええけど、阪急ファンのシンボルは900よ」そんんな風に言われたものである。

とはいえ、そんなミーハー阪急ファンも引退が近いと聞くと、やはり旧型阪急電車を見に行きたくなって出かけたのが、この能勢電である。
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そしてこの能勢電で美しい塗装の旧型阪急を見たとき、ようやくその魅力が直に伝わってきた。

僕のイメージでは、なんというか阪急の旧型はくすんだ灰色なのである。もちろんそんなはずはないのだが、それは冒頭のように艶が消えた白黒写真がもたらすマイナスの効果が相まってとても辛気臭く感じていた。

ところが実物の美しさはどうだろう。構図は拙いが上のカラー写真でご覧頂ける通りとても上品で絶妙な配色である。臙脂のボディーカラーに山吹色の窓枠。ボディーと微妙に色合いを変えた紅殻色の屋根、それを黒の前照灯と灰色の台車が引き締める。気品という言葉を使うとしたらこれほど似合う配色はないかもしれない。そしてこの配色はP-6の無骨さや後年の新性能型のスマートな車体にはふさわしくなく、モノクロでは一見、鈍重に見えたけれどもやさしい曲線とこじんまりとした旧阪急電車のサイズにあってこそ、その魅力を十全に引き出している、そのように合点がいったのである。
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ちなみに、そのときに撮影した同じ能勢電の阪急新性能型車輌。単色で映える阪急も2色塗りとなってしまうと、ややスマートさが薄れてしまうように感じられるのは否めないところ。とはいえ、それはそれでのんびりとした雰囲気の中、短編成で走る能勢電には、むしろこの塗装の方が似合っているのかもしれない。

by michikusajinsei | 2016-04-06 21:38 | 阪急電鉄 | Comments(0)