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Singapore Lunch Record No.100

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僕はいつも一人で昼ごはんを食べています。これは日本にいた時からそうでした。なんか嫌なんですよ、昼ごはんをだれかと食べるのは。昼ごはんくらいひとりで(気持ちだけは)ゆっくりと食べたいんです。

そんなこともあって、今までの昼ごはんはたとえ休日であってもいわゆる中華料理的の豪華絢爛な世界とは無縁。いつも一膳飯みたいなものを食べていましたし、それはそれで結構魅惑の世界でしたしね。

とはいえ100回目の記念にはシンガポールらしい名物料理を食べたいなあ、と思っていたところでちょうど昨日、惜別送別会が開かれることになり迷わず蟹料理、それも蟹ビーフンをリクエストしました。

シンガポールの名物というとやっぱり蟹料理です。一匹を蒸し上げてチリソースかペッパーソースをかけて食べる料理は日本の蟹料理の繊細さとは対極ですがそれはそれで美味いです。しかし僕が最も美味しいと思うシンガポールの蟹料理はこれ蟹ビーフン。そのなかでもビーフンを炒めずに蟹スープの出汁と和えたものです。これはうまいですよ。蟹の出汁をビーフンが吸ってくれてますし、またこれはこちらの特徴ですが蟹の出汁を絞り尽くすまでは煮ないので蟹自体にも美味しさが残ってます。

そう、この料理は僕の好みでリクエストしたのです。つまり宴会の主賓は、道草人生、その人。本日をもって僕はシンガポールを去り日本に戻ることになります。今晩10時40分のシンガポールエアライン、明日の朝、6時過ぎに羽田着予定。思い起こせば平成22年(2010年)2月に赴任してから5年と10ヶ月の滞在でした。

実は、僕の父方の祖父はかつてシンガポールに住んでいたことがあります。昭和17年、大東亜戦争緒戦の快勝で日本の占領下となったシンガポールで一旗揚げ、やがてはインドネシアでゴム園を経営する夢を持って上陸したそうです。まさに大東亜共栄圏への夢を描いていたのですね。

大東亜共栄圏は歴史的には帝国陸軍が米英との戦争を企図するにあたり戦争遂行の資源確保を目的として打ち上げた構想です。開戦時の帝国政府声明にある通り欧州植民地解放の端緒となったのは事実ですが経済的な共存共栄を目指していたわけではありません。しかしその構想に官にせよ民にせよ人生を賭けた人がいたのは事実ですし、そして僕の祖父は小商いの商人にすぎませんでしたがその一人でした。僕が初めてシンガポールに出張したのは平成5年(1993年)。当時はまだその頃の建物も少なからず残っておりましたし、また敗戦後に日本人が集められた島が埋め立てらずにありましたから、存命だった祖父が僕のそういった土産話を懐かしそうに聞いてくれたのを今でも思い出します。

時は移り、今回の赴任を下命された時、当初の予定ではあるプロジェクトの遂行で3年間でした。それはちょうど、祖父がシンガポールに住んでいた期間とほぼ同じです。その下命を受けた時に、何としてもこの仕事を全うしたかった。それは微力ではあるがシンガポールの発展につながる仕事でしたし、また夢破れて帰国した祖父の弔いという気持ちもありました。祖父が夢を馳せた大東亜共栄圏は政治的には無残な結末でしたが、孫の僕はせめてアジアの発展に形は変えれども貢献したかったし、またそれが祖父への供養と思っていたのです。また途中でクビになって祖父以下の在住期間でおめおめと帰れるかという意地も正直なところありました。

最終的にはそのプロジェクトは成功裡に終わりましたし、僕個人も途中で別の業務を担当することになり当初の赴任予定期間の倍、約6年間のシンガポール滞在でした。

正直なところ、今回の帰任はあるプロジェクトの失注によるところが大きいので個人的には不本意のところがあります。また赴任期間中も身辺では色々とありました。

ただ赴任当初の状況から考えれば、予定の倍も滞在できましたし、祖父の墓前にはなんとか少なくとも一つの仕事を成し遂げることはできたと報告できそうです。浅学非才の凡人にはそれだけでも望外の成功と考えなければいけないのかもしれません。

さて明日から日本の生活が始まります。Singapore Lunch Recordは100回目の今日で一区切り。今までおつきあいありがとうございました。


by michikusajinsei | 2016-01-04 09:07 | シンガポール | Comments(2)

Commented by グヤ at 2016-01-05 12:15 x
お疲れ様~!
Commented by michikusajinsei at 2016-01-05 17:57
グヤさま、コメントありがとうございます。

いや、振り返ってみればたいしたことしていない気もします。それはともかく、いつかこのような記録をまた再開したいですね。